2023年 女性議員調査の実施について
京都女子大学ジェンダー教育研究所 所長 手嶋 昭子
このたび、公益財団法人市川房枝記念会女性と政治センターと京都女子大学の共催事業として『女性参政資料集 2023年版 全地方議会女性議員の現状』を刊行することができました。調査の実施と報告書の作成は、京都女子大学ジェンダー教育研究所が担当いたしました。ご協力を賜りました関係各位に心より感謝申し上げます。
この調査は、市川房枝記念会が1971年以降実施してこられ、日本における政治領域への女性の参画状況を示す唯一無二の貴重なデータとして、多くの研究者やメディアの分析を支える根拠となってきました。2023年に当研究所が調査の実施を引き継がせて頂きましたが、調査結果を出すまでの道のりは予想外の困難の連続で、本報告書も予定より大幅に遅れての刊行となりました。その経緯等、詳細につきましては、「調査概要」(『女性参政資料集 2023年版 全地方議会女性議員の現状』参照)に譲りますが、一番の障害となったのは、総務省の通知です。
令和2年に総務省が都道府県選挙管理委員会委員長宛に発出した「候補者の立候補の届出があった旨の告示事項等について(通知)」では、候補者の立候補の届出があった旨の告示事項から、「性別」が除外されました。このため「女性議員」を抽出する本調査には回答できないとする選管が多数に上り、残念ながら、これまでの女性議員調査との連続性が一部失われた調査結果となっています。総務省の通知は、女性議員の割合の低さが課題であると明記している一方で、女性議員数の統計を取ることを妨げる内容となっており、非常に深刻な事態を招来しています。周知のように日本のジェンダーギャップ指数が低迷している理由の一つが女性議員の割合が低いことですが、統計が取れなくなれば実態は覆い隠され、課題の解決に支障が出ることは明らかです。
一時は、調査の中断もやむなしかと思われましたが、ジェンダー統計の重要性を否定するような政府の方針に異議申し立てをするためにも、あえて不完全な調査結果を公表し、世に問うことといたしました。ご理解・ご協力を賜りました公益財団法人市川房枝記念会女性と政治センター及び関係各位にあらためて御礼申し上げます。
多くの皆様に、この調査結果を活用して頂き、日本の政治領域におけるジェンダー平等の実現を後押しして頂ければ幸いに存じます。当研究所も引き続き、この問題に取り組んで参ります。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
調査概要
1.調査目的
本調査の目的は「(公益財団法人)市川房枝記念会女性と政治センター」 1)(東京)(以下、「記念会」)が1971年以降実施してきた全地方議会の女性議員調査について、「記念会」と京都女子大学との「覚書」(令和5年5月9日締結)に基づき、両者の共催事業として『女性参政資料集 2023年版 全地方議会女性議員の現状』(以下、「2023年版」)の発行を行うものである。
具体的には、2023年春に実施された全国統一地方選挙2)(以下、「統一地方選」)の結果を踏まえて、全国17883)の都道府県・市区町村議会(以下、「全地方議会」)における女性議員の状況を明らかにすることにある。
京都女子大学は、「新グランドビジョン(2020-2029)」に則り、本調査を通じて地方政治における女性議員に関する研究蓄積へ資するとともに、ジェンダー平等社会の構築に貢献することも目指す。
2.調査内容
本調査は、京都女子大学「研究所・センターからの提案型プロジェクト」の令和5・6年度に応募し、採択されたプロジェクトである。「京都女子大学研究倫理規準(平成27年4月28日施行)」4)に基づき、京都女子大学ジェンダー教育研究所が実施主体として調査の企画・運営・実施および取りまとめを行った。その際、調査にあたっての重要事項は都度、「記念会」と協議の上、内容や方向性を決定した。データの収集からデータ作成までの工程については、株式会社PDD、一般社団法人 新情報センターの両社に委託した。
以下、本調査の概要を記す。
【調査手順】
2023/09/13 | 総務省自治行政局選挙部管理課の意見を2023年8月に得た上で、全国の都道府県選挙管理委員会(以下、「選管」)に対して、調査への協力を依頼する旨の書状を郵送 |
2023/11/01~2023/12/31 | 回答の回収 |
2024/01~2024/05 | 回答内容の分析 |
2024/05~2024/07 | 一部自治体へ再回答の依頼と再回収 |
2024/08~2024/12 | 回答内容の再分析 |
2025/01~2025/03 | 回答内容の公表準備 |
【調査時点】
・2023/06/01
【調査対象】
・全都道府県・市区町村選挙管理委員会
(都道府県選管には、各都道府県内の全市区町村選管分のとりまとめも依頼した)
(都道府県選管には、各都道府県内の全市区町村選管分のとりまとめも依頼した)
【調査内容】
・別紙「調査表」の通り。(2019年調査の際に「記念会」が用いたものを継続して使用した。一部文言を付記した)
【調査方法】
京都女子大学にて本調査を目的とした専用サイト(以下、調査用サイト)を構築し、調査用サイトから各選管担当者が「調査表」をダウンロードし、オフラインで記入し、記入後の「調査表」を改めて調査用サイトにアップロードしてもらう形式を用いた。調査用サイトのURLは、各選管宛ての書状に記載するとともに、京都女子大学オフィシャルウェブサイトのトップページから誘導する導線も設置した。
尚、調査用サイトへのアクセスにはパスコードの入力が必要とする仕様を行い、回収した情報の保護につとめた。
【調査期間】
・2023/09/13~2024/07/31
【サンプル数】
・都道府県:47
・市区町村:1741(市:792, 特別区:23, 町:743, 村1835))
・回答率:93.2%
1) 「記念会」と京都女子大学は、「日本におけるジェンダー平等とおよび女性の政治的エンパワーメントの促進を図ることを目的」に「連携・協力に関する協定書」を令和4年11月30日に締結している。
2) 正式名称は「統一地方公共団体の議会の議員及び首長の選挙」。
3)北方領土の6村を含めない。
4)「京都女子大学研究倫理規準(平成27年4月28日施行)」
(https://www.kyoto-wu.ac.jp/admin/reiki_int/reiki_honbun/j000RG00000299.html 2024/01/22取得)。
(https://www.kyoto-wu.ac.jp/admin/reiki_int/reiki_honbun/j000RG00000299.html 2024/01/22取得)。
5) 脚注3に同じ。2024/06/01現在。